明るいという才能

こぢんまりとしたイタリアンのお店。
従業員はおそらく厨房に一人とホールに一人。
このホールの女性が、とても明るい人だった。
そして凄い人だった。

さっぱりとした清潔感のある髪型に、愛嬌のある笑顔。
声は聞き取りやすく、話し方もハキハキとしている。
注文をとるタイミングは抜群で、接客は丁寧。
そして何より素晴らしいのは、オーダーや料理をサーブする時に
交わす短い会話が、なんというか、適切なのだ。
リラックスして料理とお喋りを楽しむ空間において。
また、店員という関係として。

彼女との会話は、こんな感じだ。
料理やワインについてちょっとした説明をつける。
(「へえ・・・」としか言えないような難解さも「はいはい」とスルーしたくなる気障な感じもない)
前菜を自宅で作ってみた体験を語ってくれる。
(料理の美味しさと相まって自分も作ってみようかと思える!)
こちらの質問にも必要十分な答えが返ってくる。
(答えの「量」と「温度」がちょうどいいと思った)

さらに、私がすっかり心を奪われてしまった出来事がある。
私たちとは、接客+α程度の会話しかしてなかった彼女だが、
隣のテーブルの酔客に混ざって会話をした時、なんとその場のトークを回したのだ。
それはもう、立派な「MC」と言って良かった。
東京の小さなイタリアンに上沼恵美子が降臨した瞬間だった。

私はもはや小さな敬意すら抱いていたので、
彼女がまだ23歳で、バイトからこの春、正社員として
働き始めたばかりだと聞いた時は驚いた。
同時に、彼女にとってウェイトレス(ギャルソン)は天職なのかも、と思った。
バイトにも天職はあるのだ。

そんなこんなで、すっかり気分がよくなった私は、
帰りにカラオケに寄って音痴な歌声を散々響き渡らせた。
カラオケからの帰り道もまだまだ絶好調だったので、
大脳の先天的音楽機能不全に構うことなく、
サカナクションの「新宝島」やEd Sheeranの「Shape Of You」を
『口インスト』でかましていた。
トゥ・トゥ・トゥ・トゥ・トゥットゥ・トゥ・トゥトゥトゥ(新宝島)
タン・タン・タン タン・タン・タン タン・タン・タン タン タン タン(Shape Of You)
てな感じで。

音痴は文字にしても音痴なのだ。
私の天職はとりあえず音楽以外から探せば良いのだと再認識した。

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